殆どの動物病院で、開腹手術による避妊手術が行われています。
教科書的には、おへその下から下腹部にかけて15~20cmの切開を加えて、卵巣・子宮を体外に引っ張り出し、体の外で卵巣の血管、子宮の処理を行います。
それらの処置が終わると、ガーゼなどを用いてお腹の中で出血が無いかを確認し、切開したお腹を筋肉層と皮下織、皮膚と縫合し手術は完了です。そして、10日程で抜糸を行います。
当センターにおいても、1990~2003年の13年間、この手術方法で避妊手術を行ってきました。
まず気腹といって、お腹を炭酸ガスによって風船のように膨らませ、3mm、5mmといった小さな傷(穴)2~3箇所を使ってトロッカーと呼ばれる筒状の器具を設置します。
そこから2.7mmや5mmといった細い内視鏡や手術用鉗子をお腹の中に挿入し、お腹の中で卵巣の処理を行います。
血管の処理に関しては、超音波凝固切開装置(超音波メス)を用いて行います。
そして、処理された卵巣・子宮を体外に取り出します。
最後に、内視鏡を用いてお腹の中を再度観察し、止血の確認を確実に行い、小さな傷(穴)の縫合をして手術は完了です。
そして1週間程で抜糸を行います。
当センターでは、2003年から3,000例におよぶ胸腔鏡や腹腔鏡手術を行っています。
腹腔鏡による避妊手術の手術時間は15~20分程で安全かつ確実に行うことができます。
開腹手術 | 腹腔鏡手術 | |
---|---|---|
安全性 |
安全(熟練が必要) 肥満犬や大型犬で術後出血あり |
安全(熟練が必要) 内視鏡下で止血の確認ができる |
確実性 |
確実 卵巣の取り残しの問題あり |
確実 内視鏡下で確認できるため卵巣の取り残しを防ぐことができる |
麻酔、手術時間 |
15~20分 熟練していなければ長時間 |
15~20分(熟練が必要) 熟練していなければ長時間 |
傷の大きさ |
15~20cm 傷を小さくできるが卵巣・子宮に負荷がかかる。止血の確認が困難 |
3mm、5mmといった2~3箇所の小さな傷 脂肪の量によって卵巣や子宮を取りだすために1箇所の傷を1~2cmに拡大することもあり |
抜歯に必要な期間 | 10日 | 7日 |
痛み |
大きい
|
小さい
|
入院、術後看護 |
3日間程度は必要? 3日間程はしょんぼりしていることが多い |
基本的に日帰り手術 殆どは、翌日には、普段通りの食欲、元気に回復することが多い |
傷の治り |
7日以上は必要? 傷を気にしてなめる(++) |
3日以上は必要? 傷を気にしてなめる(+) |
他の臓器の観察、 検査、手術 |
切開を広げることで可能 |
傷を広げることなく可能 老齢動物にメリットが高い |
動物への負担 | 大きい | 小さい |
手術費用 | 腹腔鏡下手術に比べて安価 |
開腹手術に比べて高価 内視鏡手術機器が高額なため |