大阪府豊中市にあるルカ動物医療センターの江原院長のインタビュー記事

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院長インタビュー


院長インタビュー

豊中市にある『ルカ動物医療センター』では、2007年から“動物の負担を最小限にできる”内視鏡手術に取り組んでいます。人の医療では広く行われている内視鏡手術も、動物の医療ではまだ一部の病院でしか行われていないのが現状。今回は、内視鏡を用いることのメリットや避妊手術のお話、今後のビジョンについて江原院長にうかがいました。

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―江原院長が獣医師を目指したきっかけを教えてください。

私が獣医師になりたいと感じたのは、子供の頃。愛犬を連れて動物病院へ行ったとき、動物の命を助けるために多くの先生方が懸命に取り組まれている姿に感銘を受けました。言葉を話さない動物の苦痛を汲み取ると同時に、御家族の不安な気持ちに寄り添う…。そんな仕事ぶりに、幼いながらも人徳のなせる技だと感じたのです。
その後、酪農学園大学獣医学科に入学。卒業後、ダクタリ動物病院監査医療センターで4年ほど勤務したあと、1994年4月に当院を開設し、現在に至ります。

―江原院長の専門分野を教えてください。

当院を開設した頃は、内科・外科問わず担当していましたが、2003年から内視鏡を用いた外科手術を本格的に始めました。きっかけは、当院を開設して10年が経ったときのこと。それまでは地域で一番になることを目標に走り続けてきましたが、結果が実を結んだときに、次の目標を見失って燃え尽きてしまったのです。思い返せば当時は、二ヶ月に一度のペースで寝込むなど、社会人失格の生活を送っていました。
そんなある日、私は運命の出会いをすることになります。それが、海外の先生が催された内視鏡手術のセミナーです。内視鏡手術による術例やメリットなどをお聞きし、私は素直に「すごい」と感じました。もちろん、当時の私には高価な機械を買える余裕もなかったですし、機械の扱い方も分かりませんでしたが、「手術に導入したい」というイメージが膨らみました。その思いは日に日に膨らみ、覚悟を決めて数千万円の機械を購入したのです。

―内視鏡手術初心者の江原先生が、どのようにして技術を磨かれたのでしょうか。

私が内視鏡手術に出会った頃は、獣医師でこの方法を採用されている先生はおらず、学ぶ場所が皆無でした。そこで訪れたのが、人間の内視鏡手術で名声のある関西医科大学の松田公志先生のところ。自身の実績を持参してうかがったところ共感して下さり、手術を見学させていただくことになりました。その後も、医療界のレジェントと呼ばれる方々との奇跡的な出会いがあり、内視鏡手術を習得したいという気持ちは日に日に強まりました。
十数年前では人間の医療でも否定されていた内視鏡手術を、外科手術の主流になるレベルまでメジャーにされた先生方。私も先生方同様に、内視鏡手術が動物の医療でも主要な手術になることを目標に、次の10年に向かっているところです。

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―人間の内視鏡手術を、動物に導入する難しさはありませんでしたか。

確かに、動物の身体は人に比べて小さいですから、果たして動物たちに上手く適応できるのかと心配でした。しかし、今では、体重が1kgしかない子猫や小型犬から70kgもある超大型犬まで手術が可能です。
もちろん、それは技術を伴っていることが大前提ですので、自分で行った手術のビデオを見返したり、トレーニングボックスに参加して反復練習を行ったりと、技術磨きに余年がありません。
内視鏡手術に興味を持ってからは、それまで寝込んでいたことが嘘のように、スイッチが切り替わりました。診察が終わってから翌朝まで論文や原稿を書いたり、休日は症例検討を行ったりと休みはありませんが、一切苦にならないほどです。

―内視鏡手術のメリットを教えてください。

通常お腹の手術をするときは、皮膚をメスで大きく切り、体の中を直接目で見て、手で触れながら手術を行います。これに対して内視鏡手術は、体に開けた小さな穴からカメラを入れ、体内のモニターを見ながら行う手術です。傷口は内視鏡を入れるための3~5mm程度で、出血を減らすこともできます。また、尿管を巻き込んでいないか、卵巣のとりこぼしがないか…など、モニターを確認しながら手術を進められるのも利点です。
当院の場合、内視鏡手術を取り入れることで、手術時間が短くなりました。開腹手術で短時間の手術を意識したとき、当然ながら大きな傷を入れなければなりません。傷を小さくする方法もないとは言いませんが、臓器を引っ張ると痛みが伴いますし、無理やり引っ張り出すと糸が外れたり、神経を痛めてしまったりと、ほかのリスクが生じてしまいます。安全に、確実に、効率のいい手術を行うのが前提ですから、リスクが伴う方法をとっても意味がないですよね。
近年では、術後の活動性やお腹の機能の回復が、回復手術より内視鏡手術のほうがすみやかであることが科学的に証明されています。

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―逆にデメリットはありますか。また、デメリットを補完するために実践されていることも教えてください。

術者の立場からすると、難しい手技であることが短所ですね。開腹手術とは視野が全然違いますから、どんな病院でもできるわけではありません。未熟な獣医師が手術を行って、大きな事故を引き起こさないよう、私が立ち上げた日本獣医内視鏡外科研究会では「技術認定制度」を設けています。この制度があることで、獣医師の技術を底上げするのはもちろんですが、御家族の方たちが医院を選ぶときの線引きになりますから。
医療はどんな先生に出会うかがすべてといっても過言ではないと思います。だからこそ、患者様が来院されたときに「最高の先生に出会った」と喜んでいただけるように、日々取り組んでいます。

―貴院ではどのようなケースで、内視鏡手術を導入されていますか。

動物たちが子どもを生まない場合の避妊手術です。特に女の子の場合、卵巣をそのままにしておくと卵巣ホルモンの影響で卵巣腫瘍、子宮蓄膿症、乳腺腫瘍などの病気が起こりやすくなります。乳腺腫瘍は、犬の場合は良性・悪性が50%ずつ、猫の場合は90%以上が悪性です。それらのリスクを不妊手術によって軽減することができます。
年齢を重ねて、あとはおだやかに生活させてあげたいと思う矢先に乳腺腫瘍を切らないといけなかったり、大きな手術でも悪性なら転移して助からなかったり。そういう経験をされた御家族は、手術をしていればよかったといつも後悔されます。元気なときに手術を受けて、病気のリスクを軽減するように伝えることも獣医師の使命です。

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―麻酔のリスクが気になるところです。

確かに、その点は御家族も心配されます。そのような方々には、将来のリスクと麻酔のデメリットを天秤にかけて、どちらを選ぶか決めてほしい旨をお伝えします。もちろん当院では、麻酔の方法を動物によって変えたり、モニターで状態を確認する麻酔係を配置したりと、麻酔によるリスク・事故を防ぐために徹底的な管理を行っています。麻酔の特性や方法をしっかりと理解した知識豊富な獣医師を取り揃えておりますので、ご安心ください。

―安心な手術を掲げる上で、徹底されていることが教えてください。

当たり前かもしれませんが、手術前は必ずイメージトレーニングを行います。あらゆることを想定し、いざというときに対応できるように準備してから手術にのぞみます。また、当院では一つの手術には、4〜5名の獣医師や動物看護師が関わります。それは技術が伴っていないからではなく、1人と5人では手術の質が異なるからです。手術に没頭してしまうと、麻酔管理ひとつをとっても疎かになる可能性が否めませんから。万が一の事故を防ぐためにも人数を確保し、安全性の高い手術を心がけています。

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―内視鏡手術を広げるための、江原先生のビジョンを教えてください。

現在、動物内視鏡センターを開設し、内視鏡に関するセミナーを開きながら、内視鏡のよさを獣医師の方たちに伝えています。そして、内視鏡手術の先駆者として後輩を育成する義務があると感じています。セミナーの中で最も印象に残っているのは、大学生相手に公演をした会です。大学という新世代の獣医師たちを育てる場所で、内視鏡手術のメリットをお伝えできることは、今後の動物の医療を左右すると考えます。今以上に内視鏡施術に携わる獣医師が増え、多くの動物たちの病気を助けたいと願っています。

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